ジャックと豆の木3
ジャックと豆の木3
楠山正雄
三
しばらくすると、ジャックはまた、
もういちど空の上のお城に行ってみたくなりました。
そこで、こんどは、すっかり先せんとちがったふうをして、
ある日、豆の木のはしごを、またするするとのぼって行きました。
鬼のお城に行って、門をたたくと、鬼のお上さんが出てきました。
ジャックが、またかなしそうに、とめてもらいたいといって、
たのみますと、お上さんは、まさかジャックとは気がつかないようでしたが、
それでも手をふって、
「いけない、いけない。この前も、お前とおなじような貧乏たらしいこどもをとめて、
主人のだいじなにわとりを、ちょっくらもって行かれた。
それからはまい晩、そのことをいいだして、
わたしが、しかられどおし、しかられているじゃないか。
またもあんなひどいめにあうのはこりこりだよ。」といいました。
それでも、ジャックは、しつっこくたのんで、とうとう中へ入れてもらいました。
するうち、大男がかえって来て、また、そこらをくんくんかいでまわりましたが、
ジャックは、あかがねの箱の中にかくれているので、どうしてもみつかりませんでした。
大男は、この前とおなじように、晩ばんの食事をたらふくやったあとで、
こんどは、金のたまごをうむにわとりの代りに、
金や銀のおたからのたくさんつまった袋を出させて、
それをざあっとテーブルの上にあけて、一枚一枚かぞえてみて、
それから、おはじきでもしてあそぶように、それをチャラチャラいわせて、
さんざんあそんでいましたが、ひととおりたのしむと、
また袋の中にしまって、ひもをかたくしめました。
そして、天井にひびくほどの大あくび、ひとつして、
それなりぐうぐう、大いびきでねてしまいました。
そこで、こんども、ジャックは、そろりそろり、
あかがねの箱からはいだして、金と銀のおたからのいっぱいつまった袋を、
両方の腕に、しっかりかかえるがはやいか、さっさとにげだして行きました。
ところが、この袋の番人に、一ぴきの小犬がつけてあったので、
そいつが、とたんに、きゃんきゃん吠ほえだしました。
ジャックは、こんどこそだめだとおもいました。
それでも、大男は、とても死んだようによくね入っていて、目をさましませんでした。
ジャックはむちゅうで、あとをもみずにどんどん、
どんどん、かけて行って、とうとう豆の木のはしごに行きつきました。
さて、にわとりとちがって、こんどはおもたい金と銀の袋をはこぶのに、
ほねがおれました。
それでもがまんして、うんすら、うんすら、ふつかがかりで、
豆の木のはしごを、ジャックはおりました。
やっとこさ、うちまでたどりつくと、おかあさんは、
ジャックがいなくなったので、すっかり、がっかりして、
ひどい病人になって、戸をしめてねていました。
それでも、ぶじなジャックの顔をみると、まるで死んだ人が生きかえったようになって、
それからずんずんよくなって、やがて、しゃんしゃんあるきだしました。
その上、お金がたくさんできたときいて、よけいげんきになりました。